1978年4月18日 第084回国会 社会労働委員会 第14号から

発言者情報

労働大臣      藤井 勝志
労働大臣官房参事官 鹿野 茂
労働省労働基準局監督課長 小粥 義朗
日本共産党 田中 美智子

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○住委員長代理 次に、田中美智子君。

○田中(美)委員 全国紙の新聞配達を何年間やっていれば貸与した奨学金を免除するという奨学制度の問題について質問したいわけです。何々育英奨学会というのがありますけれども、これは大学と専修学校を対象にしているもので、それとは違いますので、非常に紛らわしいので、お間違いにならないようにしていただきたいのですけれども、各種学校、それから専修学校もあるのですけれども、主に各種学校に向けて〇〇奨学会というふうなものを常設しているところが多いわけです。この奨学制度というのは、新聞販売店に学生を紹介するのを業務としているのではないかというふうに、私が調査したのでは思えるわけです。
 たとえば、学校法人の千代田学園という学園の中に奨学会というのがあります。そして全国紙の新聞販売店に学生を紹介する業務をやっているわけです。これは、無料職業紹介をやろうとする者は職業安定法第三十三条によって労働大臣の許可を受けなければならないというふうに思うわけですけれども、この千代田学園の奨学会というのは、労働大臣の許可を受けているのでしょうか。

○鹿野説明員 許可を受けておりません。

○田中(美)委員 そうすると、ここの奨学会は法を無視して職業紹介業をやっているということですね。ですから仮に、この奨学会が職安法に基づいて許可の申請をした場合には、労働省としては許可をできる状態であるかどうかというふうに思うわけです。その点をちょっと。いまの状態で、申請していないが、もし申請すればいいのかということでしたら、許可が受けられるかどうかということです。

○鹿野説明員 ただいま御指摘いただきました千代田学園における問題でございますけれども、確かに奨学会の専従の方がおられまして、いわゆる奨学生の募集事務を行っておるわけでございます。その募集事務を行う際に、当然これは条件の一つでございますので、就労する新聞販売店を特定しなければならない。そういう意味で、特定の新聞販売店を紹介するということが、この事業の中に入ってしまっている。このことが直ちに職業紹介業務あるいは職業紹介事業と言えるかどうかは非常に疑問のあるところでございますけれども、ただ特定の販売店を紹介していくというその形を見ますと、非常に職業紹介に類似した形であるわけで、私どもは好ましいものではないというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、一定の是正指導をしてまいりたいと思うわけでございますが、ただいま御指摘いただきましたように、では、この奨学会が職業安定法三十三条に基づく労働大臣の許可を申請した場合に、どうなのかということにつきましては、この奨学会の性格あるいは団体の役割り等をもう少し検討してみないと、何とも申し上げられないというふうに考えています。

○田中(美)委員 私としては、いまのところでは業をしているというか、非常に脱法行為というふうに見えるわけなんですね。それで私としては、労働大臣の許可を受けているのは千代田学園なわけですから、この学園が自分の学生をアルバイトとして紹介する、それには、これこれ、こういう条件でこうなんですという形で紹介するように、すっきりとした形に改善させていただきたい。そうしませんと、いかにも奨学会という、いわゆる大学生が奨学資金をもらうというふうに親は誤解するわけですね。その上には全国紙の名前が出ていますので、全くその新聞社が責任を持ってやっているんじゃないかというふうに誤解をするようにできていて、実際には、どこにも責任を持つ人がいない。親がだまされたんだというので学校へ行ったら、学校は知らないという。奨学会に行ったら、奨学会は知らないという。販売店に聞けという形で、どこにも苦情の持っていきようがないという状態が起きているので、これはぜひもっとすっきりとした指導をさせていただきたいというふうに思います。まず、この千代田学園が職業をあっせんする、アルバイトをあっせんするというふうにはっきりとする。そうすれば千代田学園は責任を持つわけですから、そういうふうに御指導をしていただきたいというふうに思います。大臣、それはよろしいですね。

○鹿野説明員 確かに奨学生の募集事務と就職のあっせんということは、それぞれ別の行為でございます。奨学会におきましては奨学生の募集事務を行う。それから就職あっせんは、先生御指摘のように、千代田学園においては三十三条の許可を得ておりますので学園の紹介機関が行う、こういうような形で指導してまいりたいというふうに考えております。

○田中(美)委員 そうしますと、結局この奨学会というのは学園の中に部屋もあるし、人もいるという形ですから、口ではどういうふうにでも言えるわけですよね。実際には千代田学園に行ったら、親に対しては知らぬ、こういうわけですからね。それがいままでのような形をとっている限りは、常時そこでは何をしているのかということを監視しない限りは、これはできないことにならないかというふうに私は思いますので、ここのところの指導が非常にむずかしいというふうに思うのです。結局、これはこのままの形で、そこは販売店は紹介しないんだということになるわけですね、あなたのいまおっしゃることだと。そういうことはしない。そうするとお金だけを貸すというわけですか。奨学会の業務というのはどういうことになるわけですか。

○鹿野説明員 奨学生の募集につきましては、私どもの関与するところではございませんけれども、一応、新聞販売店に勤務するということを条件にして奨学生になるという資格が得られるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、その奨学会におきましては、奨学生になるかならないか、あるいはなる資格があるのかどうか、そういう決定は奨学会の方にしていただく。そして、その奨学生になろうという方々に対して個別の販売店をあっせんするという行為は学園の紹介機関でやっていただく。こういうような形になろうかと思います。

○田中(美)委員 そういうふうにすれば幾らでも脱法行為はできますね。名前だけで、ここで奨学生になりますかということは、もう販売店に行きますかということですからね。そうすると学校が販売店を紹介するということですね。そうすると、よほどこれがきっちりといかないと、学校の方がきちんとした責任を持たないと、奨学制度という名のもとに学生が被害を受けるという結果が起きるというふうに思うわけです。
 私が非常に心配しますのは、調べたわけではありませんけれども、奨学会というものの窓口で聞いてみましたら、三分の一以上はやめていくというんですね。やめていくというのは、お金を返すわけですからね。奨学金として最初出してもらったお金は全部返すということ。返して、やめていくということは、みすみす何の恩典も受けられなかったということです。いわゆる育英奨学会というのでしたらば、大学一年生でやめてしまった場合には、その授業料は免除とか、入学金は一年ならば何分の一とか、二年目なら何分の一とかいうふうになっていくから、そんな大きな金額じゃないわけです。しかし、この場合には大変な金額というものを最初から借りておいて、それを全部返していく。そのお金は、もともとお金がないから借りた人なんです。それを無理して人から借金したりして返してやめていく人が三分の一以上いる。あとの三分の二弱の人たちというのは、その中の何人が学校をちゃんと卒業しているかというと、個々に聞いた学生によると、自分たちはほとんど知らないというんですね。卒業したという人を聞いたことがないというふうな現状になっているわけです。
 どうして、そうなるのかということを少しお話ししたいわけですけれども、この奨学会というのは、もともとが販売店主の連合体であるということは、お調べの結果よくおわかりになったと思うのです。
    〔住委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
二年間、新聞配達を販売店でやれば、入学金、授業料、実習費、こういうものが約五十万六千円とか、ほかのものが入りますと、もうちょっとになりますけれども、五、六十万の金を一遍に出してくれるわけですね。そして販売店、つまり使用主のところから新聞配達をしながら学校へ行く。やめたときには、これを全部返さなければならないということになっているわけです。ですから、三分の一以上の人は五、六十万払ってやめているわけです。これは労働基準法の十六条に抵触するのではないか。「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」ということになるのではないかというふうに思うのですけれども、その点はどうですか。

○小粥説明員 奨学会は販売店主の団体が実質的にバックになっているというふうに承知いたしているわけでございます。一応、奨学会という別の名前でやっているわけでございます。
 それで、基準法の十六条の問題になりますと、個々の使用者が、そこの販売店に働く従業員に対して、たとえば労働契約の不履行について違約金を取る、あるいは損害賠償額を予定するということになれば、明らかに基準法十六条違反となりますが、別個の団体である奨学会の名においてやる場合、直ちに基準法十六条違反になるかどうか、形の上ではなかなかむずかしい問題があろうかと思います。それで、その奨学会という名前の団体が必ずしも団体の体をなさないで、むしろ実体的に個々の使用者が、その販売店に働く労働者と、そういう契約を、貸借関係を結ぶということになりますと、基準法十六条の問題に該当してくるケースが出てこようかと思っております。

○田中(美)委員 結局、脱法行為をしているんじゃないかというのが私の言うことで、それがはっきりしていれば即簡単にわかるわけですけれども、結局、逃げているわけです。実際には、ちゃんと資金というお金があって、奨学会がお金を貸与しているという、そういう契約ではないですね。この契約書を見てみましても、この中に就業規則を遵守せよとかというようなことが書かれている。そして借用証書に書かれているものは、千代田学園の奨学会殿になっているのですけれども、この奨学会殿イコール販売店なんですね。現実はそうなんです。その奨学会の窓口の人に聞いても、金は自分のところで持っていませんということです。ですから全部販売店に、行きたいという子がありましたから、あなたのところはすぐ授業料を払いなさい、入学金を払いなさい、こう言うわけです。そこでの契約は販売店になっているわけです。ですから、返さなければならない相手は、あなたがおっしゃるように、奨学会というのがある程度あって、労働基準法違反でないというのだったらば、奨学会に返すなら、まだわかるわけですけれども、実際に返すのは販売店に返すわけです。ここのところをしっかりしていただかない限りは、この悲劇は絶対に直らないと私は思うのです。無料の職業紹介をやっていたか、やってなかったかという問題よりも、一番大事なのはここなんだというふうに思うのです。それで半年くらいたって、大体だまされたというふうに気がつくというのです。もうとてもやっていけないというのです。
 それで、これはたとえば業務がどんなふうになっているかといいますと、この中にはこんなふうに書いてあります。これは募集の中に書いてあるのです。「時間的には販売店により小差があり、」「朝夕2回、夕刊配達は短時間で済みます。」だから「奨学会は、勉強する青年のための制度です。奨学会(販売店)が率先して勉学に支障のない日課を提示しています」きちっと印刷で、奨学会と書いて括弧して販売店と書いてあるのです。ということは、奨学会イコール販売店になっているのです。
 そして朝夕の新聞配達三百部は「短時間で済みます。」と書いてあるのですけれども、販売店に働いている何人かの新聞少年に実際に聞いてみますと、大体朝四時に起きるそうです。四時に暗いときに起きて、広告の折り込みをやるわけですね。そして五時から配達に行く。大臣、聞いていてください。これは十八歳の少年ですからね。高校を出てから来るわけです。それで今度五時から七時までで大体三百部の新聞配達が終わるわけです。そして朝御飯を食べて学校に行くわけです。それから、学校から四時過ぎに販売店に帰ってくるわけです。そして六時半まで夕刊の配達を三百部やるわけです。それから三十分で夕食を済ませて、それから今度七時から九時まで集金という業務があるんですね。この中にはそんなことは全然書いてないんです。朝晩の新聞配達だけだ、そして「短時間で済みます。」とここに書いてあるわけです。それなのに、この子供たちは七時から九時まで集金をやるわけです。その上に今度は日にちを限って拡張をさせられる。これは、ノルマが何部拡張してこいと決められますので、そうすると、ぱんぱんと拡張ができればいいですけれども、できないと結局、日曜日もやるし、学校を休んでやるという形にもなるわけです。そしてそういう拡張を夜遅くまでやるといっても、やはり九時ごろまでぐらいしか人のうちにお金を取りに行くということはできませんので、今度は九時ごろから十一時までは翌日の折り込みと仕分けや何かをするというので、大体十一時でないと自由時間にならないんですね。それから、自分たちはおなかがすいたから夜鳴きのラーメンでも食べて、銭湯に行ってというと、早くても十二時、ちょっとラジオのディスクジョッキーでも聞きたいということになると一時になってしまうというんですね。そうすると、朝四時ですからね。どんなにぎりぎりに寝ても五時間、普通は四時間しか夜、睡眠時間がないんですね。ですから、学校へ行っても眠るわけです。朝、御飯を食べても、また寝てしまって学校に行かれないというようなことになったり、その上に会社の集金をさせるということになりますと、会社ということは昼間ですので、月のうち何日かは学校に行けない。これは販売店によっても違うと思います、昼間集金させているというところは全部じゃないかもしれません。しかし、夜の集金とか仕分けとかで、夜十一時までということは、これはもうほとんどの販売店がやっているわけです。
 ですから、半年の間は無我夢中で、不眠不休のような形で、日曜はただただ寝るというような形でやって、六カ月たって、もう続けられないという形でやめようとすると、一番少ないので五十万六千円を返さなければやめられないというわけです。それは販売店なんですよ。よく聞いていただきたいのです。私の知っている弁護士のところですけれども、こんなことがいいのかというので、親が弁護士事務所に訴えたわけです。弁護士の方から、そこに、なぜ五十何万、六十何万を払わなければならないのか明細を出せという形でやりますと、すぱっと何にも言わない。そして解放してくれるというか、やめさせてくれるわけなんです。そしてその子供は親からのお金で学校へ行って卒業できたわけですけれども、結局、この奨学会にはひどい目に遭ったということで、この人は弁護士によって救われたわけですけれども、弁護士が出ていけば払わなくてもいいようなお金なのかということですね。そこのところに私はどうしても疑いを持つのです。
 時間がちょっと足らないのですけれども、ちょっと読んでみますと、おたくの方の出された労働基準法のこのコンメンタールに「一たん使用者が特定の費用を与え、一定期間の間使用者のもとで勤務しない場合は、損害賠償としてその額だけ払わせるという損害賠償予定の契約と考えることがあり、その場合、本条違反となる。」となっている。ですから、結局一万、二万、三万の借金ならば、それによって自分が拘束されたということにはならないかもしれませんけれども、十八歳の少年が五十万、六十万の借金を返さなければやめられないという状態は、これは明らかに拘束されているというふうに思うわけです。
 そういう点で、私としては、これが違反だから罰してくれということを言っているのではなくて、やはりいまの日本の状態の中では、子供たちが大学、各種学校に行くのに親からはお金がもらえない。だけど各種学校へ行きたいというので、新聞配達をしながら学校に行かれるということは、私は基本的にいいことだというふうに思うのです。ですから、こうした労働基準法違反が行われないように、まず千代田学園が責任を持つと同時に、こういうふうに返還をしなければならないというのではなくて、育英奨学会がやっているように、途中でだめだというときは免除措置をつくっていくというふうにすれば十六条違反にならないじゃないか。これは明らかに労働基準法違反じゃないか。これが違反でないというんだったら、脱法行為は何でも許せるというぐらい、本当にはっきりしている違反ではないかと思うのです。私は、その点を罰してくれというより、直してほしいという形で、いま言っているわけなんです。そういう点で御回答をいただきたいと思います。

○小粥説明員 先生御指摘の奨学会の実態については、私ども承知してない点もあったわけでございます。いままで私どもで承知しておりましたのは、奨学会の名において販売店から奨学金の原資を徴取し千代田学園の方に払う。二年の販売店での業務ができない場合の返済については、やはり、その奨学会に対して返済をするというふうに承知していたわけでございます。それがいま先生のお話のとおりですと、むしろ返済も各販売店主、つまり雇用されているところに直接返済するということになりますと、基準法十六条の問題の疑いが出てまいります。その点はさらに実態を調べたいと思います。その上で、そうしたいわゆる人身拘束的なことにならないような事態に持っていきたいと考えております。

○田中(美)委員 支払いの場合は、学校に行きますと学校が奨学会へ行きなさいと言う。奨学会へ行きますと、そこから販売店に紹介してくれる。子供はそこに行くわけですね。そうして奨学会がお金を払うときは直接子供にくれないのです。それは五十万という金ですからね。それで奨学会が販売店主に、早く金を学校へ払ってくれ、こう言うわけですね。学校へ払いなさいという催促をするわけです。ですから、奨学会は全然子供に金はくれませんし、奨学会も恐らく金は受け取っていないと思うのです。販売店が学校に直接払い込むわけですね。催促されるときは、これはもう奨学会じゃないのです。私の聞いた事例は明らかにみんな販売店主なんですね。
 ですから奨学会との契約でしたら、いやなら、すぐやめて、それでお金を返すのをどうするかという話になるのだったらば、いわゆる貸し借りの関係ですよ。しかし、やめられないで人質に取られている、五十万持ってこなければ、一年目だと八十万持ってこなければと。そうすると、一年たつと、もういやだと言ってくれたりするのですね。そういうふうになると、今度はしようがなくて、もう一年間は通うということになって、販売店主は金を返さない限りは、もう離さないわけですね。それで親のところに請求する、本人に請求するという形で、もうそのときは奨学会ではないわけです。
 ですから、これにちゃんと書いてあるように、奨学会、括弧して販売店なんですね。奨学会との貸借ならば、そこと交渉するというのならわかりますけれども、販売店へもう体は取られてしまっているわけですから、そういうことで、非常に悲劇だということで、私のところに何人もその子供が来ました。それから親も来ました。それから親が地方から電話で、どうしようもないんだ、先生に訴えたってどうしようもないんだ、おれがだまされたんだから、こういうふうな電話を、お酒を飲んでかけてきた父親もあるわけです。母親も涙をぽろぽろ流すわけですけれども、二年たっても単位がとれない。しかし、二年たちますと百何万の金を返さなければならないというので、泣く泣く、この三月まで勤めたある子がいます。
 もう一人の子の場合は、弁護士のあれで払わずに早目にやめたわけですから、いいわけですけれども、その子の場合には親が迎えに来たわけですね。それでその子を連れて私のところに来たわけです。私はしようがないから、もう二年勤め上げたから返さなくていいわけですから自分の故郷に帰れというふうに言ったわけですけれども、本人はいやだと言うのですね。どうしてかと私はその子に聞いたわけです。親は泣きながら帰ってほしいと言うわけです。親は非行になるのではないかという疑いを持って心配しているわけですね。そうすると本人は、同級生に恥ずかしい、同級生は大学へ行ったり勤めたりして、勤めた人間は何々会社に高校を出て二年間勤めたという実績ができている。ぼくの場合には、いわゆるアルバイトで新聞配達をしていたというだけで、学校の単位もとれないし何にもならない。これではとても帰れない。だから東京にそのまま居残って、どこか夜のバーテンにでもなろうかというわけですね。
 これは一つの事例ですけれども、私はその気持ちというのはとてもよくわかるわけです。大人から見れば二年のロスぐらいというふうに思う人もあるかもしれませんけれども、感じやすい十八歳の少年というのが、いま非常に多くの販売店で働いている。そのおかげで私たちが、外国のように外に買いに行かないで自分のうちで新聞を読める。それはこういう少年の犠牲のもとにあるのだということで、その子を見て本当にかわいそうで涙ぐんでしまったわけです。
 ですから、いやになったときには、きちっと免除の措置があり、そしてもっと現実に学校に行き――睡眠時間が三時間、四時間なんということは、どんな強健な子供でも、大人だって続くわけはないのですから、そういうところの責任を学校自体がもっときちっと持って、そして新聞配達をしながら学校へ行かれるように、販売店主が労働基準法違反を平気でできるような状態に置いておかないように、きちっとした指導をしていただきたいというふうに私は思います。これはもう非常に大きな社会問題だと思いますので、ぜひ労働省の指導を強くして、徹底的に、いますぐ改善をしていただきたい。あすの朝もまた、その子供たちは新聞を配っているわけですので、ぜひその点をお願いしたいと思います。大臣、どうでしょうか。

○藤井国務大臣 勤労青少年、これは成長期にある若い人が働きながら勉強する、こういう立場の人ですから、やはりその保護と健やかな成長を念願していくというのが政治の務めだと思うのであります。したがって、労働基準法なりあるいは勤労青少年福祉法、この法律の線に基づいて、いろいろな施策は進められているわけでございまして、仮にそういった法の精神に反するようなことがあるならば、これは厳重に措置しなければならない、また正しい方向に指導しなければならない、このように思います。
 いま具体的なお話でございましたが、具体的なことは、この事実をよく調査して善処しなければならぬ、こう思います。