1981年4月6日 衆議院 社会労働委員会から

発言者情報

無所属公明党国民会派 草川 昭三
労働省労働基準局長 石井 甲二
労働省婦人少年局長 高橋 久子
労働大臣 初村滝一郎

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○草川委員 最後になりますが、そういう中で実は新聞配達の従業員というものは朝四時あるいはひどい場合になりますと三時半に起きて、雨の日も雪の日も個別に新聞を配達するわけであります。そして、夜は夜で夕刊を配達し、たくさんの交通事故に遭いながら苦しんでおみえになるわけでございますし、その中には女子の従業員の方も非常に多くのパーセントを占めるようになりました。
 そこで、ここからは労働省に聞いていただきたいし、答弁を求めたいわけでありますけれども、労働組合ができている大手のところだとか、そういう組合の方々ばかりのおつき合いではなくて、このような新聞配達をやっておみえになるような零細な事業場で働く、たとえば学生の方々あるいは専門の従業員の方々にももっと耳に手を当てていただきたい。そして、賃金というのはせいぜい年間二百二、三十万だというのですよ。これは大の男の人でも年間二百二、三十万だというわけで、これは相当な意味で力を入れて関心を持たないと零細な人たちの労働条件というのは上がりません。専従従業員というのはだんだん少なくなりましたので、販売店は女子の従業員を採用しようとするわけであります。
 もう一つは、学生アルバイトを採用するわけです。特にこの学生アルバイトの場合は、アルバイトというよりも、どういうやり方をするかといいますと、奨学生、いわゆる大学へ入る場合の入学金あるいは学費というものを奨学金でつって販売従事をさせようとするわけです。私、ここに日刊アルバイトニュースを持ってきましたけれども、このアルバイトニュースを見ようと新聞を見ようと全部書いてあるのですけれども、何々新聞奨学生募集と書いてあるわけです。それで、月給は七万四千円ですよ、将来は大学を卒業できますよ、外国旅行もさせますよ、まあいいことばかり書いてあるわけですよね。
 しかし、いま申し上げたように、新聞社は物すごい拡販運動をやるわけですから、生きるか死ぬかの非常に厳しい状況の中ですから、朝と晩だけの新聞配達じゃ困りますよ、集金もやってもらいたい、あるいは集金だけではなくて拡販もやってもらいたい、こういうわけで学生が昼日中から拡販運動をしなければいかぬわけですよね。これは大変つらい話です。われわれのところへ新聞社が来たって買いませんよ。しかし、あえてその仕事をしなければいかぬということになりますと、結局学業を放棄せざるを得ない。そこで店主に、もう私はようついていけません、もうこれで勘弁してもらいたいと言いますと、では直ちにここで入学金を返せ、五十万円返しなさい、あるいは毎月の学費を返しなさいということになりますと、七十万、八十万というお金を返さなければいかぬわけです。そうすると、それを返す能力がない。返す能力がないと結局学業をやめざるを得ぬわけですよ。学業をやめて、結局新聞販売店の専従になってしまうという例が実はかなりたくさんあるわけですよ。
 きょうはこの点について少し申し上げるつもりでございますが、余り時間がないので順番からいきますと、全国で新聞販売従業員というのは何名おみえになりますか、まずその数字からお伺いしましょう。

○石井(甲)政府委員 新聞配達員の就労実態について申し上げます。
 日本新聞協会の調査によりますと、昭和五十六年二月現在新聞販売店従業員の総数は四十一万三千人となっております。その内訳は、いわゆる新聞少年が十七万七千人、満十八歳以上の者が二十三万六千人という数字になっております。

○草川委員 いずれにしても四十一万の人がおみえになるわけですね。そういう人が朝の三時半、四時から働いておみえになり、非常に苦労しておみえになるわけですから、もう少し労働省はこの点についても深い関心を持っていただきたいというように思います。
 そこで、女子の従業員がこの中に二五・八%いるという数字があります。女子の従業員は早朝勤務というのが今日の基準法からいってできませんから、日本新聞協会の販売委員会の方からは女子年少者労働基準規則六条の「女子の健康及び福祉に有害でない業務」に指定してもらいたい、早く言うならば女子も四時から仕事をやってもらいたい、本人たちも希望しておるからという申し入れをしておるのですが、私はこれは認めるべきではないと思うのです。それは少し問題があるじゃないか。安易にお母さん方にしわを寄せるということはかえって本質的な解決にならないという意見を持っておるわけでございますが、二回にわたって協会はこの申し入れを労働省に出しております。
 労働省は認めるお気持ちでございますか、どういうような態度ですか、お伺いをします。

○高橋(久)政府委員 女子につきましては深夜業が原則として禁止されているわけでございます。新聞協会の方からこの女子につきまして早朝の四時から労働ができるように特例を設けてほしいという要望をいただいておりますが、この女子保護規定を含めまして、今後の婦人労働法制のあり方につきましては現在婦人少年問題審議会において審議をしております。この審議の観点といたしましては、雇用における男女平等を確保するための諸方策について審議が行われているわけでございますが、この中で女子の保護のあり方も含めまして議論がされてまいりますので、労働省といたしましてはその結果を踏まえて対応してまいりたい、このように考えております。

○草川委員 そこで、私は女子の従業員の対応については、これは普通のキャリアウーマンの対応とちょっと違いますから、別に一項起こして検討してもらいたい、こう思うわけです。私、この基準法改正についてはキャリアウーマンの立場からはまた別の意見を持っておりますが、ここだけは違うということを申し上げておきたいわけです。
 奨学会のことですけれども、俗に言うところの育英資金というものは公益法人によってあるわけですよね。大学に入りたい、あるいは家庭の条件が悪ければしかじかかくかくの条件で卒業後何年に返済をするという育英資金というのはあります。ところがいま新聞社で、新聞販売店でやっておるところの奨学事業というものは、実は労働条件から言うならば前借に近いわけですよ。前払いに近いわけですよ。よし、金が要るなら百万円出してやるよ、それで入学金払いなさい、そのかわり三年間がんばったら免除してあげますよ。そのかわり一年でけつを割ったら返しなさいよという個別契約になるわけですよ。
 だから、基準法から言うところの、俗に言う十六条の法律についていろいろ労働省からお伺いをしておるのですが、詰めていくとどうも十六条じゃひっかからないようなんですね。ですから、何らかの形で、ひっかかると言うと言葉が悪いのですけれども、労働省として関与できる、ちょっとかわいそうじゃないか、おかしいじゃないか、めんどう見ようじゃないかというものはないだろうかという意味で、各新聞社がやっている育英奨学会を一回洗っていただいて、何らか私が言うような行政上のフォローができないかどうか、これをちょっとお伺いしたいと思います。

○石井(甲)政府委員 新聞販売学生の奨学金ということで募集をしているわけでございます。新聞販売学生が奨学金を受けて、働きながら勉強するというそのこと自体は決しておかしいわけではございません。問題は、御指摘のように途中で何らかの理由によりましてこれをやめる場合に、いわばそれを返済しなければならぬという場合に、大変御苦労な問題が起きてきます。この奨学金自体につきましては、いろいろ条件をとりまして、お互いにそれを容認し合って入るだろうと思うのでございます。そこで問題は、途中で退職する場合に一括返済させるというのは、普通一般の学生にとってはいかにも大変なことでございます。
 そこで、どういう形をとり得るかということでございますが、現実を調べてみますと、民法三十四条の公益法人として労働省が、労働大臣が認可をしているものに、新聞販売従業員共済会というのがございます。これは大体朝日系が加入しているようでございます。この中には、途中でやめる場合には分割でこれを返済してもいいような規定が入っております。したがいまして、こういう認可法人であれば、直接監督機関としての立場からいろいろ関与はできるわけでございますが、そのほか各新聞社ごとに同じような、言ってみれば独自の制度がそれぞれ置かれているのでございますが、これに対しては、いま先生御指摘のように、基準法の問題ということもはっきり明定できないようなことでございます。
 ただ、労働省といたしましては、いわゆる勤労学生の福祉等の観点から返済条件の弾力化等について、いま設立されております各新聞社の任意の関係の奨学会に理解を促して、これをそのように持っていくように働きかけをいたしたいというように考えております。

○草川委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、非常に積極的な前向きの答弁をいただいて私もありがたく思うわけでございますが、一つは労働大臣の認可法人は直接そう言っていただく。さらに入っていない、認可されていない他の新聞社に対してもこの機会に、一括返済を弾力的にしなさい、これは非常に重要なことだというのを働く勤労青少年を守る立場からぜひやっていただきたい、こう思うのです。
 この点について最後に大臣の方から見解を賜って私の質問を終わりたい、こう思います。

○初村国務大臣 できるだけ趣旨に沿うように努力いたします。

○草川委員 以上でございます。